HISTORY  歴史

HIVやエボラウィルス、
デング熱の感染拡大抑制に貢献してきたAI

2016年

ジョージア大学、マッセー大学、カリフォルニア大学の共同チームによって開発されたAIが、フィロウイルスの拡大を予測するために使用された。
フィロウイルスの宿主である可能性が最も高いコウモリの種類を予測するため使用されたモデルでは、生活歴や生態から行動記録に至るまで57種類の因子を使用し、87%の予測精度を達成

2017年

HCV(C型肝炎ウイルス)の予防のためにすべき活動の内訳を予算に応じて提案するモデルが作られた。研究チームは公衆衛生基金の最善の使い道を導き出し、予算が10億ドルの場合には「治療(特に早期治療)への全額投資」、一方、予算が50億ドルの場合は、その60%をスクリーニングに、残りを治療に投じることが望ましく、そのスクリーニングへの配分も3年目には20%に下げるべきと判断した。

2017年

シンガポールのソー・ウィー・ホック公衆衛生学校と国家環境庁の科学者チームが、デング熱のアウトブレークを予測するためのアルゴリズムを開発。
過去10年分の気候データとデング熱の季節的変動パターンを考慮し、最大4か月前に流行予測が行えるようにした。
その後、スタートアップ企業の「エイミ」が、デング熱のアウトブレークが発生しそうな場所と時期を84%の精度で予測可能なツールを提供。愛媛大学の研究者チームも、降雨および気温のデータを使い、マニラでのデング熱の発生を予測するモデルを構築した。

2018年

サウスカロライナ大学の科学者チームが、よりコスト効率の高い方法で各疾病予防機関が予防措置を講じる為のアルゴリズムを開発。このモデルをインドでの結核予防と米国での淋病予防に関する実際のデータを使いテストした結果、現在運用している手法と比べ、結核を8,000件、淋病を20,000件予防できた可能性があったことがわかった。

2020年 新型コロナウイルス感染症への
AIによる研究・対策・支援(2020.4)

  • 「COVID-19 ハイパフォーマンス・コンピューシング・コンソシアム」

    米国ホワイトハウス科学技術政策局、米国エネルギー省、およびIBMが主導する官民連携による取り組み。 米国政府、産業界、学界の各リーダーを結集し、これらの組織が持つ、 世界有数のコンピューティング資源を無償で提供。 IBMは、スーパーコンビューター「Lassen」と「Summit」を提供。現時点で世界最速のスーパーコンピューター「Summit」は、 COVID-19の感染を防止する薬を開発する研究ですでに使用され、8000種類の化合物をスクリーニングしている。

    参加企業・団体

    IBM / Amazon Web Services / Google Cloud / マイクロソフト / マサチューセッツ工科大学 / レンセラー工科大学 /カリフォルニア大学サンディエゴ校 / エネルギー省管轄国立研究機関 / アルゴンヌ国立研究所 / ローレンス・リバモア国立研究所 / ロスアラモス国立研究所 / オークリッジ国立研究所 / サンディア国立研究所 / 国立科学財団 – ピッツバーグ・スーパーコンピューティング・センター / NASA

  • 「新型コロナウイルス情報ハイウェイ」

    新型コロナウイルス関連の検証済みデータを収集・提供・利用する為、ブロックチェーンを使ったオープン・データハブを構築。

    参加企業・団体

    IBM /マイクロソフト /オラクル / ジョンズ・ホプキンス大学 / 中国国家衛生健康委員会

  • IBM

    新型コロナ関連の質問に対応する「Watson Assistant for Citizens」提供。
    IBM Researchの自然言語処理テクノロジー、「IBM Watson Assistant」、「IBM Watson Discovery」の機能を組み合わせ、オンラインと電話のフォーマットで利用が可能。
    新型コロナウイルス感染症関連で殺到する照会電話に政府機関や学術機関、ヘルスケア組織が対処出来るような支援をする。

    新型コロナウイルスの感染状況を示すマップを公開

    The Weather Companyと連携し、モバイルアプリ、weather.com、オンラインダッシュボードで、郡レベルまでの詳細な感染事例を示す感染マップや、州別の傾向グラフなどの情報を入手することが出来る。
    検査センターや医療施設の場所や、その他の公衆衛生情報を追加することも計画中。
    ダッシュボードはIBMの「Watson」を活用し、「IBM Cognos Analytics」を基盤として構築。WHOと複数の国家、州、地域当局からのデータにアクセスして分析するツール。

  • マイクロソフト

    「AI for Health」 による新型コロナウイルス感染症対策

    5つの特定分野に注力し2,000万ドルを投資。

    ・データと知見: 安全と経済的影響に関する情報を提供

    ・治療薬と診断法: ワクチン、診断法、治療薬の開発をより進める研究を支援

    ・リソース配分: 病院のスペースや医療機器など、限られたリソースを分配する際の提案

    ・正確な情報の発信: 誤った情報の拡散を抑え、正確な情報を発信

    ・科学的研究: COVID-19 の研究

主なパートナーシップは以下の通り。

・COVID-19 ハイパフォーマンス コンピューティング コンソーシアム

ホワイトハウスの科学技術政策局が進めている民間と公的機関による取り組みでマイクロソフトは世界で最も強力なコンピューティングリソースを研究者に提供。ウイルスを阻止する科学的発見のスピードを大幅に高める。研究者は、世界中でコンピュータサイエンスや生物学、医学、公衆衛生などの分野を研究しプロジェクトに協力している

・健康指標評価機関 (IHME : Institute for Health Metrics and Evaluation)

COVID-19のデータ可視化セットをリリース。ホワイトハウスや米連邦緊急事態管理局(FEMA)、州知事、病院の管理者らがリソースを集約するために使い始めている。

・ワシントン州保健局

住民にデータをタイムリーかつ正確、迅速に報告できるよう、新たなダッシュボードを準備中。地域保健所管区や医療施設、研究所などのデータによって構成。

・Folding@home

分散コンピューティングを活用しCOVID-19 のタンパク質を研究し、治療法の設計に役立てる。

・Sepsis Center of Research Excellence (SCORE-UW)

病院、産業界、血液バンク、大学、出資パートナーを結ぶネットワークで世界的なコラボレーションを行う。臨床データや放射線画像、患者のほかのバイオマーカー反応なども使い、COVID-19陽性患者を予測し、医療や社会経済的な影響を改善する新しいアルゴリズムを開発。

・Take

公式情報や信憑性の高い情報を国民に届け、潜在的患者を医療チームとつなぎ、ブラジルの病院がパンクしないようにすることを目的にボットを開発。スタートアップ企業や研究者による、AIを使ったウイルスの感染経路をモデル化して封じ込める戦略(2020.4)

  • ブルードット(BlueDot)

    自然言語処理と機械学習を活用して特定の場所でのメディアの言及などデータを解析することで、感染症が流行している地域を特定する。さらに、こうした地域からの航空機の出発便に関する情報を追跡し、感染拡大を予測2016年、この手法によりジカウイルスの感染がブラジルから国境を越えて米フロリダ州に拡大することを、米国初の感染例が報告される前に正確に予測。また、19年12月にも、新型コロナが(発生源である)中国の武漢市から東京やバンコク、ソウルなどの都市に拡大することを予想

  • 米メタバイオタ(MetaBiota)

    自然言語処理でソーシャルメディアでの言及など非構造化データを徹底調査し、世界各地の感染の深刻さを解明。この情報に、インフラや医療態勢、人の移動予定など様々なデータに基づいて各国のリスクを数値化したアルゴリズムを組み合わせ、感染症の影響を受ける可能性が高い地域とその影響を予測。AIとリスクの数値化を活用して新型コロナの影響を地図に示す。

人工知能研究の歴史 人類を脅かせてきた
感染症
画像診断技術の歩みと
人口知能研究の推移年表図
世界的な伝染予防の
計画対策ツールとなる
可能性を秘めるAI